秋風に はつかりがねぞ 聞こゆなる 誰がたまづさを かけて来つらむ 紀友則

【秋風に はつかりがねぞ 聞こゆなる 誰がたまづさを かけて来つらむ 】
            紀友則 (古今和歌集・207)



(あきかぜに はつかりがねぞ きこゆなる たが たまづさを かけてきつらん)

【意味秋風に乗って初雁の声が聞こえて来る。
    遠い北国から、いったい誰の消息を携えて来たのであろうか。

    前漢の将軍蘇武(そぶ)が囚われ、数年過ぎた後、南に渡る雁の足に手紙をつけて 放した。

    それが皇帝の目にとまり、無事、帰国する事が出来たという故事に基づいて詠まれた歌です。

    飛んでいる雁を見て、別れた人々の消息、 転勤で別れた人や結婚して独立した子供、
    あの人達は今どうしているだろうかと思って詠まれています。

 【注】かりがね=雁が音。雁の鳴く声。雁の異名。
    たまづさ=手紙、消息、使い。
    かけて=掛けて。掛けて、取り付けて。

作者・・紀友則=きのとものり。907年頃没。
     「古今和歌集」の撰者の一人。

香龍