君に似し姿を街に見る時のこころ踊りをあはれと思へ
君に似し姿を街に見る時のこころ踊りをあはれと思へ
作者:石川啄木(1886年~1912年)岩手県出身、明治時代に活躍した歌人。文学で生きていこうと上京しましたが、失敗や挫折を繰り返し、貧困と病苦の中で生活に即した3行書きの歌集『一握の砂』で有名になりました。27歳で病で死去。
出典:一握の砂
読み方:きみににし すがたをまちに みるときに こころおどりを あわれとおもえ
解釈:君に似た人を町に見かけると、あなたではないかと思って胸が躍るのをかわいそうだと思って下さい。
★句切れなし
★こころ踊り→心が躍ること。精神的に興奮すること。
★あはれ→かわいそう
★「君」は、同僚の女性教師、橘智恵子です。
石川啄木は、北海道に渡って、函館、札幌、小樽、釧路と道内を転々としました。最初の函館に渡ったのは明治40年5月5日で22歳。6月11日にこの小学校の代用教員となり、その時の同僚の女性教師が橘智恵子です。9月13日に札幌に移ったので、同僚としての勤務は僅か3か月でした。この歌は作者が東京へ帰ってから詠まれました。好きな人を見かけてドキッとした心情、相手に会えない事情や寂しさ、思いを寄せる相手への強い気持ちを詠んだ歌です。