和漢朗詠集 藤原 行成筆を臨書
【和漢朗詠集】
146 花の色に 染めしたもとの 惜しければ 衣かへ憂き 今日もあるかな 重之
【意味】春に着ていた花の色に染めた衣を脱ぐのが惜しいので、衣を変えるのが辛い今日であることだ。
首夏
147 甕頭竹葉経春熟 階底薔薇入夏開 白(はく)
甕頭(をうとう)の竹葉は春を経て熟す
階底(かいてい)の薔薇(しゃうび)は夏に入りて開く
【意味】酒甕の中の竹葉酒は春を過ぎて熟成した。階段の辺りの薔薇も夏に入って開き始めた。
148 苔生石面軽衣短 荷出池心小蓋疎 物部安興(もののべ やすおき)
苔(こけ)石面(せきめん)に生(お)ひて 軽衣(けいい)短し
荷池(はちすち)心(しん)に出(い)でて 小蓋(せうがい)疎(おろそ)かなり
【意味】苔がうっすらと石の表面に生えて薄い夏の衣を着ているようだが、まだその丈は短い。
蓮の葉が池の中央のあたりに伸び出て小さな笠をさしているように見えるが、まだその数はまばらだ。
149 わが宿の 垣根や春を へだつらん 夏来にけりと 見ゆる卯の花 順(したがう)
【意味】我が家の庭の垣根は、隣家を隔てるだけでなく、春をも隔ててしまったのだろうか。
そこには夏がやって来たと見える卯の花が咲いている。