或る闇は蟲の形をして哭けり 河原枇杷男
或る闇は蟲の形をして哭けり
作者:河原枇杷男 『密』(昭和45年刊)所収。昭和5年生まれの現代俳人。
季語:虫(秋)
「哭く」⇒ 意味は、大声をあげて号泣する。葬儀の際に死を悲しんで泣き叫ぶこと。
因みに、「鳴く」も意味は、獣、鳥、」蟲が声を出す。人が涙を流して声を出す。
私達には「予感」「予兆」の世界があり、そこでは、闇が虫の形で哭くことがあります。現実世界の事象よりより一層現実的に、人の心に迫ってきます。ということから、「ある闇」は心そのもののできごとなのではないでしょうか・・・。
哲学者の梅原猛さんは、この句について、「秋になく蟲の中に、宇宙の深い深い闇の権化をみたのかもしれない」と書いています。